皆さんはいつもどんなティーカップで紅茶を楽しんでいますか?
普段、何気なく使っているティーカップですが、 実はその形状が、紅茶の味に影響を与える可能性があると言われています。もしそうであれば、紅茶の性質や自分の好みに合わせてティーカップを選ぶことで、いつものティータイムがもっと楽しくなるはず!
そこで今回は、ティーカップの形状が味覚にどう影響するのか、4種類の異なる形状のカップを使って実際に検証してみました。感じ方は人それぞれ異なると思いますので、あくまでも一つの参考として、お楽しみいただければ幸いです!
カップの形状が味覚に影響を与えるのはなぜ?
そもそもなぜ、ティーカップの形状が味覚に影響を与えると言われているのでしょうか。ここでは、考えられる3つの可能性をご紹介します。検証結果だけ知りたい方は、読み飛ばして「4種類のティーカップで飲み比べ検証!」のセクションへ進んでくださいね。
舌への流れ方が、味覚を左右する?
まず、ティーカップの形状は、紅茶の口内での流れ方、つまり舌のどの部分に紅茶が最初に触れ、どのように口内に広がっていくのかに影響を与えます。
例えば一般的に、カップの形状によって、以下のような傾向があります。
●口径が広く、薄めで、背が低いカップ(ティーカップに多い形状)
紅茶が舌先に触れた後、舌全体にゆったりと広がるように流れる傾向があります。
●口径が狭く、厚めで、背が高いカップ(コーヒーカップに多い形状)
紅茶が舌の中央に集中的に流れ込み、舌の奥へとスピーディーに運ばれる傾向があります。
そしてこの流れ方の違いが、味覚に影響を与えると言われています。
理由の一つは、口内全体にゆったりと広がると、舌や口内全体が刺激され、繊細な香味を感じとりやすくなるためです。
もう一つは、舌の部位によって、感度にわずかな違いがある可能性です。以前は「舌の部位によって感じる味が異なる」という「味覚地図」説もありましたが、現在では、どの部位でも5つの基本味(甘味、塩味、酸味、苦味、旨味)を感知することが分かっており、この説は否定されています。ただ、舌の奥は苦みに対してやや感度が高いという研究報告があるなど、舌の部位によって感度に違いがある可能性も。まだまだ未解明なことも多い味覚ですが、今後の研究によって、新たな事実が明らかになるかもしれませんね。
香りの広がり方
ティーカップの形状は、紅茶の香りの広がり方にも影響を与えます。
●口径が広く、薄めで、背が低いカップ(ティーカップに多い形)
香りが広く拡散し、香りをゆったりと楽しみやすい傾向があります。
●口径が狭く、厚めで、背が高いカップ(コーヒーカップに多い形)
香りがカップ内に凝縮され、カップを口元に近づけた際に香りを強く、ダイレクトに感じる傾向があります。
香りも味わいを決める重要な要素ですよね。香りの感じ方の違いによって、味の感じ方が変化することが考えられます。
温度変化
また、ティーカップの形状は保温性にも影響を与え、お茶の温度変化の速度に差をもたらします。
●口径が広く、薄めで、背が低いカップ(ティーカップに多い形)
熱が放出されやすく、紅茶が冷めやすい傾向があります。
●口径が狭く、厚めで、背が高いカップ(コーヒーカップに多い形)
熱が逃げにくく、保温性が高い傾向があります。
甘みは体温に近い温度で最も強く、渋みや苦みは温度が低くなるほど強く感じる傾向があります。そのため、紅茶の温度によって、感じる味わいも変化していきます。
4種類のティーカップで飲み比べ検証!
さて今回は、特徴が異なる4種類のカップを用意し、同じ紅茶を飲み比べてみました。
検証方法
検証方法は以下のとおりです。
- 紅茶をポットで用意 (今回は、ダージリン・セカンドフラッシュ・シーヨック農園を使用)
- 特徴が異なる4種類のティーカップを用意し、濃さが均一になるように紅茶を回し注ぐ
- 各カップで「水色(すいしょく:紅茶の抽出液の色)」「香り」「味」「保温性」を検証
使用したティーカップの種類
使用したカップは、以下の4種類。
写真右から順に、
- ピオニーシェイプ(芍薬・朝顔型)
- リーシェイプ
- ヴィクトリアシェイプ系統のカップ
- マグカップ(円柱型)
です。
用意したカップは、右から左に行くほど背が高くなっているので、それに伴って紅茶の水色もどんどん濃くなっているのが分かりますね。
それぞれのカップで香りと味を検証!
それでは、各カップの特徴と、検証結果を見ていきましょう!
ピオニーシェイプ
形状の特徴
ウェッジウッドから発売されている「ピオニーシェイプ」のカップ。紅茶の水色と繊細な香味を楽しめるように開発された、紅茶専用のカップです。
ピオニーとは芍薬(シャクヤク)を意味し、その名の通り、大きく優美な芍薬の花を思わせる形状をしています。口径が広く、背が低く、縁が外側に広がっているのが特徴です。
検証結果
検証結果
●水色:鮮やかな橙色。
●香り:大きく開いたカップから香りがふんわりと広がります。
●味:一口飲んだ瞬間の印象は、とにかくまろやか。紅茶が舌先から舌全体へじっくりと広がり、複雑な香味と奥深い味わいをしみじみと堪能できます。
●保温性:4つの中で最も冷めるのが早かったです。冷めるほど味わいがしっかりし、温度変化による味わいの違いも楽しむことができました。
【総評】紅茶のまろやかさや、繊細な味わいをじっくりと感じとりたい時に選びたいカップ!
リーシェイプ
形状の特徴
ウェッジウッドから発売されている「リーシェイプ」のカップ。コーヒー・紅茶の兼用カップとして発売され、どんな飲み物にも対応しやすい、汎用性の高さが人気のカップです。
口径は狭めで、縁はストレート。コロンとした丸みを帯びたフォルムが特徴です。
検証結果
検証結果
●水色:鮮やかな茶色。
●香り:口元に運ぶと香りをダイレクトに感じます。
●味:口に含むと、まずしっかりとした味わいをダイレクトに感じ、その後、繊細な香味やまろやかさが広がります。紅茶は、最初に舌の中央~後方へ流れ込み、その後舌全体で味わいを感じました。
●保温性:ピオニーシェイプよりは冷めにくいですが、より背の高い他の2つのカップと比較すると保温性は低めでした。
【総評】紅茶の渋みや、しっかりとした味わいを楽しみたい時に選びたいカップ!
ヴィクトリアシェイプ系統
形状の特徴
このカップは、背が高く、真ん中がくびれたような形で、口径はやや広め。縁は外側に広がっているのが特徴です。
正式なカップの形状名は特定できませんでしたが、「ヴィクトリアシェイプ」や「モントローズシェイプ」と呼ばれる、縦長タイプのティーカップに近い形状をしています。
検証結果
検証結果:
●水色:濃い茶色。
●香り:カップ内に凝縮されつつ広がります。
●味:「ピオニーシェイプ」と「リーシェイプ」の良いとこ取りをしたような印象を受けました。しっかりとした味わいと、まろやかさ、そして繊細な香味がバランス良く楽しめます。紅茶は、まず舌の前方から中央に流れ込み、その後、舌全体に広がっていくように感じました。
●保温性:保温性が高いので、紅茶をゆっくりと楽しみたいときにもおすすめです。
【総評】バランスの良い美味しさを求めている時に選びたいカップ!
マグカップ(円柱型)
形状の特徴
最後はお馴染みのマグカップ。色々な形状がありますが、今回は他の3つのカップとの違いが大きいと思われる、円柱型のものを選びました。
検証結果
検証結果:
●水色:もはやコーヒーかと思うほどの焦げ茶色。
●香り:カップを口元に近づけた時に、香りを強く、ダイレクトに感じます。
●味:リーシェイプで感じた印象と似ていますが、よりすっきりとした飲み口で、紅茶が舌の奥へと運ばれやすいように感じました。
●保温性:保温性が高いので、紅茶をゆっくりと楽しめます。
【総評】しっかりとした味わいの紅茶を、たっぷり、ゆっくりと楽しみたい時に選びたいカップ!
検証結果のまとめ
以上、特徴の異なる4種類のティーカップで飲み比べを行いましたが、カップによって大きな違いが感じられました。
カップの特徴と検証結果を表にまとめたものがこちらです。
カップの形 | 高さ | 口径 | 縁の形 | 縁の厚み | 水色 | 香り | 味わい | 保温性 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ピオニーシェイプ | 低い | 広い | 広がっている | やや薄い | 鮮やかな橙色 | ふんわりと広がる | まろやか、繊細、じっくり味わえる | 低い |
リーシェイプ | やや低い | 狭い | ストレート | やや厚い | 鮮やかな茶色 | ダイレクトに感じる | しっかり、ダイレクト | やや低い |
ヴィクトリアシェイプ系統 | やや高い | やや広い | 広がっている | やや厚い | 濃い茶色 | カップ内に凝縮されつつ広がる | バランスが良い | 高い |
マグカップ(円柱型) | 高い | 狭い | ストレート | 厚い | 焦げ茶色 | 口元に近づけた時に強い | すっきり、しっかり、ダイレクト | 高い |
どのカップでいただいても美味しいことには変わりありませんが、検証を経た個人的なおすすめとしては、
●まろやかさや繊細な香味をじっくり楽しみたい場合
→「ピオニーシェイプ」系のカップ
●しっかりとした味わいや渋みを楽しみたい場合
→「リーシェイプ」や「マグカップ(円柱型)」系のカップ
●バランスのよい味わいを楽しみたい場合
→「ヴィクトリアシェイプ」系のカップ
というのが今回の結論です。
ただし、これはあくまでも一つの検証結果に過ぎません。
味の感じ方には個人差がありますし、好みも人それぞれです。同じ人でも、その日の体調や気分、年齢によっても感じ方が変わると言われています。さらに、ティーカップの持ち方や口元への接し方、また傾け方によっても、紅茶の口内への流し込み方が異なり、感じ方も変わることが考えられます。
そして、カップの形状も千差万別。今回検証した4種類以外にも、様々な形状のカップが存在します。カップの微妙な形状の違いや厚みの違いによっても味わいは変わると思いますので、色々と比べてみると楽しいと思います。
ぜひ皆さんもお手元のカップで飲み比べをして、検証してみてくださいね!
まとめ
今回は、「ティーカップの形状で紅茶の味が変わる?」」という疑問を検証すべく、4種類のティーカップで同じ紅茶を飲み比べてみました。その結果は、カップによっては「同じ紅茶!?」と驚くほど、味わいが異なる、興味深いものに。ぜひ皆さんも、色々なティーカップで飲み比べをしてみてくださいね!
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